【紹介】海辺のカフカ【小説・2002年発刊】
ブックオフで古本を眺めていて、そういえば読んでないなと思って上下巻を購入したのがひと月ほど前だ。
2、3週間ほどかけてじっくり読み終えて、とりあえず紹介文を書くことにした。
「万物はメタファーである」
ゲーテの格言だが、この物語において重要な言葉でもある。
たとえば目の前に赤いリンゴがあったとき、なぜそのリンゴが赤いのか、それには深い意味があるということを示している。
もしそれが青いリンゴだったら、もしそれが赤いイチゴだったら、おそらく自分の今後の行動は大きく変わるはずだ。
そうあるべくしてあるのだ、という哲学である。
この小説の文体はとても簡潔で読みやすい。小説を読みなれていない人もすらすら読めるだろうと思う。
だが、物語の内容はとても難解だ。漫画を読んだりアニメを見るように受動的に見ているだけでは、意味が分からないまま読むのをやめてしまうことだろう。
暗喩(わかりづらいたとえ・メタファー)がとても多い。だが、分からなくてもいいのだ。全てを捉える必要はない。
とりあえず手に取って単純な意味を受け取りながら読み進めるといいと思う。
一つ注意点があるとすると、この小説についてできるだけインターネットで調べたり書評を読んだりしないほうがいい。
難しい内容の物語ほど、不要な偏見は持たない方がいい。解釈のゆがみは、自分自身だけで完結させるべきなのだ。
最後に一つ引用しよう。
『ことばで説明しても正しく伝わらないものは、まったく説明しないのが一番いい』
――海辺のカフカ下巻509p~