【紹介】グリーン・ブック【3/01上映開始】
目次
1.世界観
2.脚本
3.映像
4.総評
1.世界観
1952年のアメリカが舞台。
事実に基づいた物語で、そこで生きている人々の生活にはリアリティがある。
当時は今よりずっと黒人差別が生活に根付いていて、それについて考え方が人物ごとに食い違うことが多かった。
そう言った現代日本ではあまり馴染みのない生活が忠実に再現されている。
2.脚本
実際にいた人物の物語で、空想の物語特有のご都合主義な展開はほとんどない。
人を殴れば逮捕されるし、人と抱き合えば感動が生まれる。
人種差別について一石を投じるような内容ではなく、純粋なヒューマンドラマとしてとてもよい脚本だったといえる。
説教臭い場面は一つもなく、現代特有の『差別』にアレルギーを示すような極端な登場人物もいなかった。
ただその時代に一人のイタリア系アメリカ人と黒人ピアニストが出会い、友情をはぐくんでいくその過程を記録した物語だ。
3.映像
天才的な黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーは知的な人物で、たとえどんなひどい扱いを受けても怒りをあらわにしない。その分彼の考えや心情はあらゆる場面にメタファーとして表れている。
やとわれのイタリア系アメリカ人の用心棒兼ドライバーのトニーも自分の思ったことを常にそのまま口に出すような人物でもない。
普通の人間と同じように、言いたくないことは言わないし、言うべきでないこともまた、言わない。
彼らのそういった言葉にならない感情は、うまく映像として表現されていたように感じる。
殴る場面はあったが、派手さも残酷さもなくただそういった事実があった程度のもので、苦手な人でも気にならないだろう。
4.総評
南北戦争が終わってから90年ほどがたち、キング牧師がまだ暗殺される前の時代。
アメリカ全土で評価されている天才的な黒人ピアニストが差別の根強い南部でコンサートツアーを開く。
それだけ聞けば人種差別について深い部分に突っ込んでいく、いわゆる『重い話』に聞こえるだろう。
実際この物語はとても『重い』
だが人種差別があろうがなかろうが往々にして人生とは『重い』ものである。
そして人生の根本的な問い。『家族』とは。『友情』とは。『善』『悪』とは。
そう言った身近な物事についてとても考えさせられる内容だった。
『人種差別に興味がない』『重い話はつかれる』といった理由でこの映画を見るのをやめるのはとても勿体ないと感じる。それくらい価値のある作品だった。
自分の人生について真剣に考えることができる人には、おすすめしたい。